日本では、牛肉・鶏肉・豚肉に比べると、あまり馴染みのない羊肉ですが、多くの国で広く親しまれている食材ですし、ヨーロッパ圏では高貴な肉として扱われている国もあります。
まず羊肉には「ラム」と「マトン」という種類があって、それぞれに味わいにも違いがありますので、その特徴から簡単に説明します。
「ラム」と「マトン」の違い
まず「ラム」とは、生後1年未満の仔羊の肉。
ただし、年齢を正確に判断するのが難しい場合が多いと思いますので、その場合は永久歯が生えていなければ「ラム」とします。
一般的に羊肉はクセが強いと言われますが、ラムはほとんどクセがなく肉質も柔らかいので、状態さえよければ食べやすい肉だと思います。
特に生後間もない仔羊は甘いミルクのような香りが特徴的で、「乳飲み仔羊」と言われて高級食材として使用されています。
次に「マトン」は、生後2~7年程の羊肉です。
羊肉特有のにおいとクセがあるため、苦手という人は多いかもしれませんね。
でも、新鮮な状態のマトンはそんなににおいも強くはないしクセも少ないのですが…。
ラムに比べると赤身も強いので、見慣れるとある程度なら見分けられると思います。

端的に言うと、「ラム」と「マトン」の違いは臭みや味わい、という事だと思います。
ラムはあまりクセがなく、肉質も柔らかく食べやすいので人気が高く、マトンは独特の臭みがあるが、その特有の野性味が好きな人にはたまらなく(僕もこの部類)、肉質はしまって程よい歯ごたえがあり、旨味とコクもラムより強く感じられます。
また、ラムとマトンの間に「ホゲット」という種類もあり、これは生後1年以上2年未満くらいの羊肉で、それぞれの特徴を併せ持つタイプです。
ラムよりも旨みやコクがあり、マトンほどクセはないので食べやすい方ですね。
北海道に行けばジンギスカン!
コロナの影響でここ3年は行けていませんが、僕はワイン造りの忙しい時期を避けたタイミングで、毎年レストラン関係の仲間たちと一緒に、北海道のワイナリー巡りをしていました。
その際に必ず行くのがジンギスカンのお店。
いやーこれだけは外せません!(笑)
羊肉は日本では、古くからジンギスカンとして北海道で食べられる食文化があり、それにはよくサッポロビールと楽しまれる風潮でしたが(確かに合います!)、もちろんワインもよく合います。
ここからはワインの話も入れていきますが、ジンギスカンにワインをチョイスする際は、もちろん肉感でも選ぶのですが、決め手は独特のたれの甘さなどから考える必要があります。
色々なたれがあると思いますが、オーソドックスなものはリンゴの酸と玉ねぎの甘みが濃厚で、ニンニクもしっかり効いた味わいですかね。

こういったパンチの効いた味わいなら、豊かな果実味が広がるボディがしっかりとした、スペインの赤ワインはいかがでしょうか。
ラムなら特に、柔らかな肉の旨みとたれの甘やかな味わいが、こういったボリューム感あるふくよかなタイプのワインが最高にマッチして、旨みが倍増して楽しめると思います。
またラムのジンギスカンには、日本のマスカット・ベリーAを主体にして仕上げたワインを合わせてみても面白いと思います。
それ単体のワインなら少しボリューム感と深みにかける感があるので、同じ日本特有のヤマ・ソーヴィニョンなどをブレンドする事で、マスカット・ベリーAの持つ豊かな果実味の柔らかさに、酸味と渋みが加わった味わいになって、バランス的にしっくりしてくると思います。
ただこの組み合わせのネックは、北海道ではマスカット・ベリーAを使ったワインがほとんどなく、ジンギスカンのお店にはほぼ置いていないので、自分たちで持ち込ませてもらうか、現地以外の所で楽しまないといけないって事ですね(-_-;)
その他の羊料理とワイン
実は「ラム肉にはボルドーワイン」という定番の組み合わせも存在するのですが、調理法や味の決め手となるソース、付け合わせの食材などによって、もちろん合わせるワインも変わってきます。
ラムの柔らかで緻密な食感を生かした料理には、若めのヴィンテージのボルドーワイン(カベルネソーヴィニョン主体)の爽快感と組み合わせたら面白いと思いますし、豪快に仕上げた炭火で焼いた肉には、同じボルドーでもメルロー主体の土壌由来のミネラルが感じられるワインを合わせた方が寄り添ってくれると思います。
でも僕としては、ハーブをしっかり効かせたワイルド仔羊が好きなので、それに南仏ローヌのスパイシー系のワインで合わせるのが好きですね。

僕もこのワイルドな味わいとジューシーな肉感、タイムやローズマリーなどのハーブのニュアンスを最後にまとわせてローストする事で出てくる、エキゾチックな香りが大好きです!
まずはこの香りだけでワインが2,3杯飲めるくらい食欲とワイン欲を掻き立てます(笑)
そして脂の乗ったロゼ色に輝くラムは、噛めば噛むほどしっかりと味が出てきて、野性的かつミルキーな要素も入った独特な味わいが特徴ですね。
こういった料理には、やはりマトンよりはラムの方が圧倒的に合っていて、ワインとの組み合わせを見ても好相性だと言えます。
逆にマトンは、煮込み料理やカレーなどに使うととても旨みが出ますし、普段とは違った個性的なメニューの完成です。
マトンをじっくりコトコト煮込んだ赤ワイン煮込みには、オーストラリアのシラーズで造った赤ワインを合わせたくなりますね。
ふくよかなボリュームある果実感と、ソフトなタンニン、飲みごたえのあるパワフルなタイプのワインなら、ワイルドかつ濃い目のマトン料理にでも負けずに寄り添ってくれる事でしょう。
他には、見た目はチョリソに似たメルゲーズというソーセージも、よくフランスやスペインなどのヨーロッパ中心に食されている料理です。
メルゲーズは、羊肉に香辛料を混ぜて作ったスパイシーなソーセージですが、生まれは北アフリカのアラブ諸国と言われていますが、今では地中海沿岸でよく親しまれています。

最も古典的な製法で作るメルゲーズはチョリソを思わせるほど赤く、保存のために塩分が高めで香辛料も効いている個性的な味わいです。
色々なタイプが地域によって存在しますが、どれも基本的には味わいが濃く仕上げられているので、お酒がとても欲しくなる食材です。
食べ方も様々で、そのままカブリつくなら正直ビールを飲みたくなるのですが、煮込み料理に入れたり、パンに挟んだり、クスクスと一緒に盛られたり、とそれぞれの味わいに合わせて、マッチするワインと楽しみたいものですね。
このように好き嫌いが結構分かれる羊肉ですが、流通面の質の向上によって以前ほど臭みの強さはなく、良い状態で食すことが出来るようになった環境もあり、現在ではとても美味しい羊料理がレストランでも提供されています。
昔の嫌なイメージを継続してお持ちの方がいらっしゃったら、まずは手始めにラムを使った料理から挑戦していただいて、現在の品質が向上した羊肉を味わってみてください。
できればそのお供にワインでも合わせていただくと、さらにその食事が楽しくなることでしょう!